前編をご覧になっていない方は、
前編よりお楽しみ下さい。 → 走れメロス(前編)
ダイヤモンドヘッドの麓(ふもと)に辿り着いた私。
目指すは、当然てっぺんだ。
門番の制止を振り切り、
6時の開門と同時に走り出す。
どうせなら、一番に頂上に登りたい!!
そこに、またまた行く手を阻むは、新手の門番。
門:「One dollor please!!」
私:「Why?」
どうやら、入山料がかかるらしい。
(こういうことは、先に言っといてくれよ。)
私:「I have no money. Please Please!!」
門:「No!!」
(そんな怖い声で言わなくたって・・・。)
私は海外では、カードしか持たない主義である。
当然、現金など持ち合わせていない。
(やばい、ここまで来て撤退か・・・。)
額には大量の汗がにじみ出す。
必死になって、あるはずもない紙幣を探す。
私は海外用の財布に一縷(いちる)の望みをたくす。
すると、3枚のジョージ・ワシントン※1を発見。
いつぞやの旅行の残金である。
(助かったぁ。)
でも、たかが山登りに金をとるとは、
ダイヤモンドヘッドもえげつない。
(1ドルぽっちでも、オイラにとっては大切さ。)
変なところで足止めを喰らってしまった。
先を急がねば・・・。
ダイヤモンドヘッドはオアフ島の休火山。
いつ、また爆発するかわからない。
そんな恐怖と向き合いながら、
我々はひたすら山道を駆け抜ける。
山を登る前に、ツアーガイドからこんな話を・・・。
19世紀、イギリスの水夫たちが
石灰岩をダイヤモンドと間違えたのが、
この山の名前の由来らしい。
こんな夢物語(?)を聞いていたので、
私は期待で胸いっぱいだった。
が、近くに来るとそうでもない。
単なる赤い土の塊だ。
でも、もしかしたら・・・。
と、ギュッと目を凝らして探してみる。
さっきの1ドルの、元だけは取らないと・・・。
(どこまでケチなんだ。)
案の定、ダイヤらしき物体はどこにもない。
(当たり前か・・・。)
おっと、そんなことをしている場合じゃない。
是が非でも、日の出までには頂上に登らねば・・・。
そう、富士登山リベンジ※2だ。
標高232mのダイヤモンドヘッド。
富士山に比べたら、大したことはない!!
山頂までの道のりは0.7マイル(約1.1km)。
1時間程で登れるらしいが、
そんな悠長なことは言ってられない。
日の出予想時刻は6時半。
なんとしても、30分で登りきる!!
今の私にとっては壮大な目標。
体内では早くも、乳酸が溜まり始めている。
そんな私を尻目に、同僚は走り続ける。
同:「すみません。先に行きます。」
(置いていくんか~い!!)
同僚の足取りは思いのほか軽かった。
ちなみに、ダイヤモンドヘッドはゆるやかで、
くねくねとしたコースである。
トレッキングには、ちょうど良い。
しばらく行くと、
目の前に階段がそびえ立つ。
ふと、手すりを持つと、妙な違和感が・・・。
右手を見ると、ベットリとさびが・・・。
ぬおおおおーーーー!!
さびは、吹き出した汗と混ざり合い、
鮮やかな赤へと変化を遂げていた。
なんじゃこりゃぁーー!!
これでは、とても手すりを掴めない。
この巨体を二本の足だけで支えるのは、
さすがにキツい!!
階段を昇りきると、トンネルが表れる。
このトンネル、とにかく先が見えない。
その上、とても狭いのだ。
かがまないと、頭をゴツンとぶつけそう。
徐々に感じる頂上への気配。
私の足取りも次第に軽くなる。
薄暗いトンネルを抜けると、
そこにはさっきよりも長くて急な階段が・・・。
もう、勘弁してくださいよぉーーーー。
五臓六腑が悲鳴を上げる。
心の臓は今にも飛び出しそうだ。
そんな私に容赦しないのが、
ダイヤモンドヘッドのスゴさである。
さらに、らせん階段が私を待ち受ける。
私の腿の筋肉は、今にも引きちぎれんばかりだ。
標高232mの山を完全に舐めていた。
ダイヤモンドヘッドは
そんな私に牙を剥いたのだ。
暗闇を抜け、いよいよ、頂上の展望台。
最後の階段だ。
同僚はてっぺんで両の手を広げ、私をお出迎え。
同:「ISOJINさん、間に合いましたよ。」
太陽は・・・。
かろうじて、まだ登っていなかった。
間に合ったぞぉーーーーーー!!
360度の大パノラマが広がる絶景で、
私は声の限りを尽くし叫んだ。
すると、太陽が東の空からお出迎え。
疲れは吹っ飛び、頭は空っぽ。
とても爽快だ。
この感動を、全ての人に届けたい。
(父さん、母さん、生んでくれてありがとう。)
でも、私には感慨に浸っている時間はない。
これから急いで下山し、
ホテルで朝食を食べなければならない。
(食への執念だけは、凄まじいのだ。)
朝食のタイムリミットは午前11時。
しかも、移動手段はこの足のみ。
走れ! ISOJIN。
≪イソジンのよく解る用語解説≫
※1 ジョージ・ワシントン・・・アメリカ合衆国初代大統領。
桜の木を切り倒したことで、一躍有名になった。
※2 富士山リベンジ・・・
念願の富士山で日の出を見逃したISOJIN。
詳しくは「富士山(前編)」をご覧下さい」。
(注)ISOJIN Blogはフィクションです。実在する人物、団体、事件には関係ありません。全ての判断は読者であるISOJINマニアの皆様に委ねられています。
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