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2009年10月10日土曜日

走れメロス(後編)


前編をご覧になっていない方は、
前編よりお楽しみ下さい。 → 走れメロス(前編)


ダイヤモンドヘッドの麓(ふもと)に辿り着いた私。

目指すは、当然てっぺんだ。

門番の制止を振り切り、

6時の開門と同時に走り出す。

どうせなら、一番に頂上に登りたい!!

そこに、またまた行く手を阻むは、新手の門番。
















門:「One dollor please!!」

私:「Why?」

どうやら、入山料がかかるらしい。

(こういうことは、先に言っといてくれよ。)


私:「I have no money. Please Please!!」

門:「No!!

(そんな怖い声で言わなくたって・・・。)


私は海外では、カードしか持たない主義である。

当然、現金など持ち合わせていない。


(やばい、ここまで来て撤退か・・・。)


額には大量の汗がにじみ出す。

必死になって、あるはずもない紙幣を探す。

私は海外用の財布に一縷(いちる)の望みをたくす。

すると、3枚のジョージ・ワシントン※1を発見。










いつぞやの旅行の残金である。

(助かったぁ。)

でも、たかが山登りに金をとるとは
ダイヤモンドヘッドもえげつない。

(1ドルぽっちでも、オイラにとっては大切さ。)

変なところで足止めを喰らってしまった。

先を急がねば・・・。


ダイヤモンドヘッドはオアフ島の休火山。

いつ、また爆発するかわからない。

そんな恐怖と向き合いながら、
我々はひたすら山道を駆け抜ける。


山を登る前に、ツアーガイドから
こんな話を・・・。

19世紀、イギリスの水夫たちが
石灰岩をダイヤモンドと間違えたのが、
この山の名前の由来らしい。


こんな夢物語(?)を聞いていたの
で、
私は期待で胸いっぱいだった。

が、近くに来るとそうでもない。


単なる赤い土の塊だ。

でも、もしかしたら・・・。


と、
ギュッと目を凝らして探してみる。

さっきの1ドルの、元だけは取らないと・・・。

(どこまでケチなんだ。)


案の定、ダイヤらしき物体はどこにもない。

(当たり前か・・・。)


おっと、そんなことをしている場合じゃない


是が非でも、日の出までには頂上に登らねば・・・。

そう、富士登山リベンジ※2だ。

標高232mのダイヤモンドヘッド。


富士山に比べたら、大したことはない!!

山頂までの道のりは0.7マイル(約1.1km)。

1時間程で登れるらしいが、
そんな悠長なことは言ってられない。


日の出予想時刻は6時半

なんとしても、30分で登りきる!!


今の私にとっては壮大な目標。

体内では早くも、乳酸が溜まり始めている。


そんな私を尻目に、同僚は走り続ける。

同:「すみません。先に行きます。」

(置いていくんか~い!!)


同僚の足取りは思いのほか軽かった。

ちなみに、ダイヤモンドヘッドはゆるやかで、
くねくねとしたコースである。














トレッキングには、ちょうど良い。


しばらく行くと、
目の前に階段がそびえ立つ。















ふと、手すりを持つと、妙な違和感が・・・。

右手を見ると、ベットリと
さびが・・・。

おおおおーーーー!!

さびは、吹き出した汗と混ざり合い、

鮮やかな赤へと変化を遂げていた。


んじゃこりゃぁーー!!












これでは、とても手すりを掴めない。

この巨体を二本の足だけで支えるのは、
さすがにキツい!!

階段を昇りきると、トンネルが表れる。














このトンネル、とにかく先が見えない。

その上、とても狭いのだ。

かがまないと、頭をゴツンとぶつけそう。

徐々に感じる頂上への気配。

私の足取りも次第に軽くなる。

薄暗いトンネルを抜けると、
そこにはさっきよりも長くて急な階段が・・・。





















もう、勘弁してくださいよぉーーーー。


五臓六腑が悲鳴を上げる。

心の臓は今にも飛び出しそうだ。

そんな私に容赦しないのが、

ダイヤモンドヘッドのスゴさである。

さらに、らせん階段が私を待ち受ける。














私の腿の筋肉は、今にも引きちぎれんばかりだ。

標高232mの山を完全に舐めていた。

ダイヤモンドヘッドは
そんな私に牙を剥いたのだ。

暗闇を抜け、いよいよ、頂上の展望台。

最後の階段だ。






















同僚はてっぺんで両の手を広げ、私をお出迎え。

同:「ISOJINさん、間に合いましたよ。」

太陽は・・・。

かろうじて、まだ登っていなかった。

間に合ったぞぉーーーーーー!!


360度の大パノラマが広がる絶景で、
私は声の限りを尽くし叫んだ。

すると、太陽が東の空からお出迎え。
















疲れは吹っ飛び、頭は空っぽ。

とても爽快だ。


この感動を、全ての人に届けたい。

(父さん、母さん、生んでくれてありがとう。)

でも、私には感慨に浸っている時間はない。

これから急いで下山し、
ホテルで朝食を食べなければならない。

(食への執念だけは、凄まじいのだ。)

朝食のタイムリミットは午前11時。

しかも、移動手段はこの足のみ。

走れ! ISOJIN。

≪イソジンのよく解る用語解説≫
※1 ジョージ・ワシントン・・・
   アメリカ合衆国初代大統領

   桜の木を切り倒したことで、一躍有名になった。
※2 富士山リベンジ・・・
   念願の富士山で日の出を見逃したISOJIN

   詳しくは「富士山(前編)」をご覧下さい」。



(注)ISOJIN Blogはフィクションです。実在する人物、団体、事件には関係ありません。全ての判断は読者であるISOJINマニアの皆様に委ねられています。

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